気になっていた所があるので考察4の記事を訂正したい。
この記事で私は「60年後に登場した村民のうち初老の郵便局員は「顔貌」と「瞳の色」からホッジンズ達が学校で会った子供達の一人の「オールバックの少年」ではないかと思っている。」と書いた。しかし今見直してみるとこれは明らかに間違いである。「顔貌(髪質や髪色も含む)」は今でも似ていると思っているが「瞳の色」は明らかに違っている。「オールバックの少年」は琥珀色だが「年配(先に初老と書いたがあえてこう訂正する)の郵便局員」は暗めの緑なのである。瞳の色は年をとっても変わらない。したがってこの二人は同一人物ではない。
ちなみにもう一人の村民である「若い学校の先生」の瞳の色は「年配の郵便局員」と同じ暗めの緑で、さらに二人の顔貌はよく似ていることからも若い学校の先生が「年配の郵便局員の子供」であるという意見の方は今でも変えていない。
結論から言うと、「年配の郵便局員」はバイオレットとギルベルトの孫であると訂正する。さらにこの「年配の郵便局員」の父親が私が当初「年配の郵便局員」その人と考えていた60年前にヴァイオレット達とエカルテ島で出会った「オールバックの少年」であると考えている。つまりバイオレットとギルベルトの間に娘ができて、彼女と「オールバックの少年」が成人後に結婚し、生まれた子が「年配の郵便局員」であるという仮説である。ゆえに「若い学校の先生」はバイオレットとギルベルトからするとひ孫ということになる。この関係はデイジーの実家であるマグノリア家と対応させてある。マグノリア家はクラーラ、アン、デイジーの母、デイジーと四代続いていくが、「若い学校の先生」がデイジーとするとヴァイオレットはクラーラに相当する。すなわちヴァイオレットはあの青年のひいおばあちゃん、ギルベルトはひいおじいちゃんで、ギルベルトとヴァイオレットに始まる一族は4代にわたり60年後も絶えることなく続いていることになるのである。
この仮説が成り立つか否かはこの二人の村人、特に「年配の郵便局員」の年齢と身体的特徴をどう評価するかにかかっている。皆さんは「年配の郵便局員」が何歳に見えるだろう。実は自分の正直な印象では50歳前後なのだが年配の男性の年齢は以外と見分けにくい。40歳以上60歳未満ならありなのではないか。やや老け顔という設定にしてぎりぎりで40台前半とは取れないだろうか?
ここで本作の登場人物達が60年後に(存命なら)何歳になるかをわかる範囲で考えてみたい。ヴァイオレットがC.H郵便社を辞めてエカルテ島でギルベルトと暮らすことを決めたのが彼女が18歳の時で、デイジーがエカルテ島を訪れたのがその60年後という設定である。ゆえに、ヴァイオレットは78歳、ギルベルトはヴァイオレットより15歳年上なので93歳になる。(それぞれの誕生日は違うので1年の誤差はありうる。)
アンの年齢は簡単である。ヴァイオレット14歳、アン7歳の時に二人は出会っている。したがってアンは71歳で亡くなったことになる。(1年の誤差はありうる。)ちなみにクラーラの手紙は8歳から50年間だから57歳まで配達された。そしてアンはこの50年間ずっと「愛する人はいつも見守ってくれている」を実感していた。だから手紙が届かなくなった後の14年間もキャリアウーマンとして仕事に生きがいを見つけた娘のことをクラーラが自分にしてくれたように静かに見守ってあげることにしたのだろう。結果忙しい娘一家とは別々に暮らすことになったけれども離れていても心は繋がっていたから、のちにデイジーがその事で母を責めていたがそれは誤解で彼女は決して寂しくは思っていなかったに違いない。
デイジーの年齢は不明だが、デイジーの母の年齢は計算できる。アンは19歳でデイジーの母を産んでいる(20歳の誕生日の段階で乳児)。ヴァイオレットとアンの年齢差は7歳なのでヴァイオレットが18歳の時アンは11歳だから、ヴァイオレットがエカルテ島でギルベルトと暮らすことを決めた年の(19-11=)8年後にアンは出産したことになる。したがってデイジーの母は(60-8=)52歳になる。(1年の誤差はありうる)。デイジーは10代後半から20代前半であろうから比較的遅めの出産だったのだろう。デイジーの母はキャリアウーマンであることから結婚そのものが遅かった可能性がある。父親はさらに年配か?そしてアンは長生きできたおかげで自分がクラーラから見守ってもらえた「50年間」と同じ時間を生きて娘を見届けることができた。そしてこの子はもう大丈夫と確信したからクラーラのように自分の死後娘宛の手紙を残すことはしなかった。残す必要がなかったということなのだろう。
さてここでかの「年配の郵便局員」がヴァイオレットの孫であるという仮説の検証を行う。そのためにヴァイオレットとギルベルトはヴァイオレットがエカルテ島でギルベルトと暮らすことを決めた直後の60年前に早々に結婚し翌年には女児を出産したと仮定してみよう。そうであるなら劇中には登場しないヴァイオレットの娘(おそらく瞳の色は少佐と同じ)はヴァイオレットが19歳の時の子になるから60年後は(60-1-1=)58歳となる。(赤ちゃんの1年目は0歳だから1年引いている。また1年の誤差はありうる。)さらに彼女も「オールバックの少年」と若くして結婚して18歳で男児を設けたと仮定してみよう。そうすれば彼女の子である「郵便局員」は(60-18-1=)41歳ということになり(1年の誤差はありうる。)、これなら彼の歳は40台前半になる。また、彼の父親である「オールバックの少年」も年齢ははっきりとは特定できないが、映画で登場した60年前は小学校中学年から高学年程度と考えれば8歳から11歳になるので、いずれにせよヴァイオレットの娘とは歳の差婚になる。ヴァイオレットとギルベルトは15歳差、ドロッセル王国のシャルロッテとフリューゲル王国のダミアンは10歳差と切りのよい数字が選ばれているので例えば年の差を10歳に設定にしたとしてみよう。そうなると「オールバックの少年」は60年前は8歳、現在68歳となる。ちなみにシオンは瞳や髪の毛の色から考えても「郵便局員」と同一人物ではありえないが、劇中5歳なので60年後は65歳になる。(1年の誤差はありうる。)
次に「年配の郵便局員」と「若い学校の先生」の身体的特徴について考察したい。
その前にネットでは早くから「年配の郵便局員」はヴァイオレットとギルベルトの子供か孫ではないかと囁かれていた。この時は子供説の方が多かったと思う。正直なところ見かけからは「年配の郵便局員」はヴァイオレットとギルベルトの孫と言うより子供と考えた方が腑に落ちる。彼が60年後の現在で50歳だと仮定すれば、ヴァイオレットとギルベルトが結婚して10年後に生まれたヴァイオレット28歳、ギルベルト43歳の時の子ということになるが、それなら辻褄があう話だからだ。ところが彼が二人の子であると考えるにはどうしても納得できないことがある。それは彼がある「一つの身体的特徴」を除いて、ヴァイオレットにもギルベルトにも全然似ていないということである。「年配の郵便局員」が着けていたドールの徽章はヴァイオレットが着けていた物と同一ではなくレプリカであることも判明しており、それを所持しているからといって彼が親族である証明にはならないという事実もその解釈の背中を押していた。
しかしながらこの「一つの身体的特徴」は重要である。それは彼が「暗めの緑の瞳」を持っているということである。「年配の郵便局員」に身体的特徴の酷似する「若い学校の先生」も同様にこの「暗めの緑の瞳」を持っている。物語の中で「緑の瞳」を持つものはブーゲンビリア家の母方の一族に限られていた。よってこの二人はブーゲンビリア家の母方の強い遺伝子を受け継いだ可能性が極めて高いのである。彼らの瞳の色は本家の緑の瞳からすれば明度が下がっている。これは別の(平凡な?)遺伝子の影響を受けてしまったからと解釈できないこともない。ギルベルトもヴァイオレットも並外れた能力を持っていた。しかしおそらくそういった能力も彼らは受け継いではいないだろう。それでも作中他の登場人物の瞳の色には使われていない緑の瞳を持つという事は彼らがブーゲンビリア家の母方の血を引く者であることを示していると言えそうなのである。
一方「年配の郵便局員」と「若い学校の先生」は髪型のせいもあるが身体的特徴を比較すると「オールバックの少年」とよく似ている。そして「オールバックの少年」の琥珀色の瞳の遺伝子がブーゲンビリア家の「緑の瞳」の遺伝子の明度を下げ「暗めの緑の瞳」になったと考えても矛盾はなさそうである。
以上からヴァイオレットの孫である「年配の郵便局員」とひ孫である「若い学校の先生」はたまたま「瞳の色」以外は「オールバックの少年」の遺伝的特徴の方を強く受け継いだので祖父母(若い学校の先生からは曽祖父母)であるギルベルト夫妻に風貌が似なかったと解釈できないこともないのである。
では「オールバックの少年」がなぜ父親として選ばれたのだろうか。そのために彼の本作での役割はなんであったかをもう一度思い出してみよう。先の考察で私は60年前のエカルテ島にあの事件で亡くなった京アニの人達が村民として降り立ち、残された京アニのアニメーターの象徴であるギルベルトと、アニメ制作現場ないしは彼らが今後生み出すであろう京アニの作品そのものの象徴であるヴァイオレットを陰になり日向になり応援してくれていたという考察をした。その時に「オールバックの少年」はエカルテ島にもともといた村民の一人であろうと推測した。ただこの子は不思議な子で、劇中この子の周りには常に村民姿に蘇った京アニの亡くなった人達と思われる人々がいた。つまりオールバックの少年は京アニの亡くなった人達を本作の中に引き寄せる道しるべのような役割をしていた(オールバック すなわち皆帰ってきて欲しいという意味かもしれない)と書いた。
この仮説が正しいならもうそれだけで「オールバックの少年」はギルベルトとヴァイオレットの一族に加わる人としてふさわしいと言えるのではないか。
そして以前考察した「オールバックの少年」が一時期C.H郵便社に勤めていたという仮説も今でも変わっていない。ホッジンズの退職記念とされる写真に彼が写っているという仮説も同様である。その後彼はエカルテ島に帰って義理の母のヴァイオレットから島の郵便局の業務を引き継ぎ、息子である「年配の郵便局員」も一時は島を出てライデンシャフトリッヒの旧C.H郵便社に勤めたか始めからエカルテ島の郵便社に現地採用されて、尊敬する父とおばあちゃんの仕事を継いで今に至るのかもしれない。ヴァイオレットの図柄の記念切手が発行できたのは、自国(エカルテ島諸国)の郵便行政に一定の発言力を持ちかつ旧C.H郵便社のパイプもある「オールバックの少年」が当局に働きかけたことで実現し、彼の息子である「年配の郵便局員」も村人の要望を纏めるなどして協力したからではないか。
そして孫は尊敬するひいおじいちゃんの仕事を継いで学校の先生になったのだろう。
ではデイジーがエカルテ島で出会った時に二人は何故ヴァイオレットが自分の祖母や曾祖母であると言わなかったのだろう。それは彼らがギルベルトとヴァイオレットの血を引く者ならではの奥ゆかしさに起因すると考えている。ギルベルトとヴァイオレットはおそらく亡くなっているだろうが、エカルテ島の島民にとってはこの二人は思い出の中で永遠に自分達の家族同様になっているはずである。言い換えればこの島では血縁者のみが取り立ててこの二人を自分の家族だと強調するものではないということなのであろう。
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